11/23/2014

Subtext サブテキスト 〜隠された言葉〜

前回少し紹介したように、今回はサブテキストについて書いてゆきたいと思います。

”Subtext サブテキスト”とは?
これは、台詞では表されていない人物などの態度(感情、考え)です。主に表情、身体の動きなどに現れます。そして、これらのサブテキストは、全世界共通のものとそうでは無いもの(文化的背景に多く依存するもの)があります。

がしかし、多くの役者やアニメーションで使われるのは全世界共通のものが多いです。というのも、作られた作品は、色々な国、文化の人々が見る事になるからです。なので可能な限り文化的背景を持ったサブテキストは回避するようにしています。

ここからは、参考アクティングと共に書いて行きたいと思います。
参考にする動画は、原題"Notebook" (邦題 君に読む物語)です。この映画、僕自身、話の内容も好きですが、主人公の男女のエモーショナルな演技が素晴らしくとても好きな作品の一つです。もし良ければ、全編見てはいかがでしょう。おそらくアクティングの色々なヒントが見つけられると思います。

さて、今回のシーンのリンクですが
http://youtu.be/E1I0hAxGFXw?t=1m35s
台詞はたった一行 "What do you want ?"(何が望み?)この台詞が4回繰り返されるだけです。言っている台詞は繰り返しですが、4回の繰り返し中、彼のサブテキストは全て違います。その辺りを感じ取ってもらうのが今回のブログの目的です。

1回目
少し荒めに、しかしまだジェントルに訪ねています。しかし台詞の裏には彼のいらつきが見て取れます。そして、左手のスイングが彼女に答えを強要しています。言葉には出していませんが、彼は彼女の態度に苛ついているのです。ちなみに、この台詞を言う前に唇をなめるのは、彼のAnticipation(予備動作)となります。

2回目
彼は彼女が頭を振っているのを見ています。コレも彼女のサブテキストで否定 "I can not answer" (答えられない) という様な事を表しています。話を彼に戻しましょう。
彼女の反応をみて彼は、更に強い苛つきとともに、強く彼女に答えを求めます。そして、既に1回目ほどのジェントルさはありません。

3回目
彼は彼女が喋り終えるまえに話し始めます。これは、彼の苛立ちがマックスになり、彼女の答えられないという理由はいいので、「とにかく答えを出せ!」という強い姿勢を見せています。そして、今回彼はそれぞれの言葉を、はっきりゆっくり話しています。この動作は 「私の言葉を良く聞いて、答えなさい、解った?」という暗示です。ちょうど大人が子供に話しかけるように、自分が上の立場になって、コントロールを取り戻し答えを引き出そうとしています。

4回目
しかし、彼女は答えを出しません。今回彼は、ほぼ諦めに似た態度で台詞を吐き出します。彼は、この台詞を言いますが、もはや答えを期待はしていません。

どうでしょうか、4回同じ台詞を繰り返しただけですが、だんだんと盛り上がって、クライマックスがあり、最後は落ち着く。このような流れがあります。
台詞だけだと「どうしたいんだ?」というたった一言ですが、サブテキストと一緒に見ると様々な感情や、考えの多様性が見られ、アクティングに深みを与えているのを感じて頂けましたか?


11/18/2014

Animationの決まり事

皆さんはアニメーションを付けるときに気をつけている事は何でしょうか?アニメーションでアクティングを付ける際に色々な決まり事などが本などに書かれていることがありますが、皆さんはいくつ思いつくでしょうか?


  • リップシンクはオーディオの2F前に付けると良い
  • 緊張している人は瞬きが多くなる
  • 楽しい事や、嬉しい事を考えている時は視線が上向きになる
  • 緊張している人の視線は速く動く
などなど、思いつくもの全て書き出してください。

書けましたでしょうか?
では、書き出したそれらを全て忘れてください。

アクティングを付けるにあたって、それらは正解であり間違いでもあります。なぜなら、それらは一般論であって、必ずしもどの場合にも当てはまるとは限らないからです。当たり前の事をいまさらと思うかもしれませんが、実際アクティングを付ける際にこれらの決まり事にガチガチにとらわれすぎて、おかしなアニメーションになっているのを多数見てきています。

例えば、上記の「緊張している人は瞬きが多くなる」を例にとって考えてみましょう。
「緊張」という状況にも色々な緊張があります。
「大好きな俳優にあって緊張」している場合、「面接テストで緊張」している場合。
最初の場合、緊張はしていますが、瞬きはひょっとしたら減るのではないでしょうか?
自分の大好きな俳優をもっと見たい!という欲求から、目は大きく開き、 ほとんど瞬きはしない。それとは対象に後記の場合は瞬きが多くなるというのが、当てはまりそうです。
頭の中で色々な考えがごちゃごちゃしていて、まとめようとして瞬きが増える、そして視線は落ち着かず、キョロキョロしている。もっと考えると、もっと違った表現方法が思い浮かびます。

このように、本などに書かれている法則などは、必ずしも毎回当てはまるとは限らず、その法則の通りにやると、変なアクティングになってしまう時があります。
極論を言ってしまえば、アークを意識してアニメーションを付けるというのも、場合によってはおかしいアクティングになってしまう事になる時があります。

ではアクティングのアニメーションで一番大切な物、コアとなる物は何でしょうか?

それは”Subtext”と言われるものです。ここが一番肝心な物です。全てはここから始まっています。次回はこのSubtextについて書いてみたいと思います。

10/18/2014

Paddingtonを終えて。。。。

タイトル通り、プロジェクトがアニメーター的に終了して、毎日マッタリと過ごしている所です。でまぁ、 Paddingtonはほぼ9ヶ月ほどアニメーターとして関わっていました。最初は僕を含め、3人程で始まったプロジェクトも最終的には、アニメーションデパートメント全員でやる、大プロジェクトになりました。とてもいい経験でした。
初めての海外就労という事もあり、最初は色々と戸惑っていましたが、最終的にはよい感じに終れたと思います。(スーパーバイザーが素晴らしい成長ぶりだとプロジェクトのレビューでいってくれていたのを、事実だと信じたい。勿論周りの人のサポートがあっての成長ですが)

振り返って、何が最初駄目だったか?
アニメーションを付けて、サブミットして、その後コメントを待つ。最初はこのスタンスでした。しかし、ある時期から、コレはなんなく良くない気がして、方針を変えました。
どう変えたのかというと、サブミットする前にリードなりスープなりに見せてディスカッションをするようになりました。コレが、結構いい方向にすすんで、お互いの意見を交換したり、よりよいコミュニケーションを構築するきっかけに なりました。

アニメーションのスキル的には、凄く劣っていると言う訳ではなかったのですが、このコミュニケーションが自分でも巧くいってないと感じており、それが自分のアニメーションに反映され、イマイチ納得がいかない感じでした。

はやり、コミュニケーションが一番大切だと、実感した時です。

次に、初期はやはり、ディテールが全然足りていませんでした。勿論、その当時は全力を出していたと思いますが、いま初期のファイルなどを開くと、全く見せるのも恥ずかしい感じのアニメーションでした。それが、周りの人の良いアニメーションを沢山見る事や、リード、スープなどのノートを通して、だんだん自分の目が良くなって、ディテールにも自分から気付く事が出来てきました。

環境が自分のスキルを促進させてくれたんだなと感じた時です。また、日本のアニメーションと海外のアニメーションの違いを肌で実感した時でもありました。

あとは、パイプラインがとてもしっかりしていて、この辺りは凄く効率よく出来ているものだと関心させられっぱなしでした。ショットガン初めて本格的に使ったけど、使い易かったw 日本に居るときに、何となく触った事あったけど、「使いにくい」という印象しか持ってませんでした。

本当はもっと詳細に書きたいのですが、大人の事情で書く事が出来ないので、もし何処かで僕に会う事があれば、その際に是非お話ししたいとおもいます。






10/11/2014

ブロッキングの誤認識について

最近後輩のアニメーターとSkypeで話をして気付いた事、ブロッキングについて少し間違った認識をしていたので、それについて書いてみたいと思います。

まず、定義としてブロッキングと言うのは、アニメーションの進行状況を表すステージであるという事です。

その彼が間違っていたのはブロッキングステップモードのカーブと認識していた所。

上記にあるように、ブロッキングはアニメーションのステージを表すものなので、ステップモードのカーブの人もいれば、スプラインカーブの人もいます。つまり、カーブの状態は全く関係ありません。 Twitterのタイムラインでも以前似たような事を呟いてた人が居たので、日本ではそういう独特な使われ方をしているのかもしれませんね。

折角なので、ブロッキングについては以前書きましたがもう少し書いて行きたいと思います。

ブロッキングは、基本自分がそのショットに入れたい動きを全て入れてしまいます。要するに、ショットの設計書です。なので、ブロッキングが一番頭使います。というのも、ここで、このキャラだったら、こういう動きをして、こういうリアクションをして。。。と色々考え、ある人はリファレンスを取ったり。アイデアが行ったり来たりが一番多い部分だからです。

さて、ブロッキングのプロセスで、keypose に in-between を入れると動きがガタガタするのはなぜ?という事も聞かれたので、僕の考えを書いておきたいと思います。

それは in- between のポーズがおかしいからです。

最初と最後のポーズが正しくて、間のポーズを入れたら動きがガタガタするのは、追加したポーズが間違っているのは明らかです。ですので、もしin-between入れて、ガタガタし始めたら、もう一度、入れたポーズを確認してみてください。

また、keyposeについても質問があったので、書いておきます。
基本的にkeyposeはコンタクトポイントと力の流れが変わる所を取ります。
勿論、各自それぞれとは思いますが、大体はこの部分を押さえておけば大丈夫です。



8/25/2014

Layout, Blocking, Polish

今回は、タイトルにある様にLayout, Blocking, Polishの事について今の仕事場の状況を交えて書いてみたいと思います。

ザックリこの三つの物をまとめてみると

  • Layout フレーミング、何処にどれだけ移動するのかなどの大まかな情報を含めたもの
  • Blocking Layoutでアプルーブが出た物に対し更に詰めたアニメーションを入れ込む。この段階はアニメーションのブルーフィルムの様な物なので、自分がしたいアニメーションを全て詰め込んでおいた方がいい(texture含む)
  • Polish Blockingでアプルーブが出た物に対してさらに細かいチェックをしつつ、アニメーションを整えて行く
という流れになります。それぞれ、細かく見てゆくと

Layoutで必要な要素は、どのキャラが、何処で、何を、どれくらい、どうするのか?という事を明確にしてゆく作業です。カメラから見たフレーミング、コンポジションは良いか?動くタイミングは良いか?などを決めるステージです。VFXの場合だと、全てが自由という訳ではなく、カメラは勿論実写で決まっていますのでそれマッチするように考えてゆきます。

次にBlockingのステージですが、ここでは僕はなるべく自分がしたいアニメーションのほぼ全てを入れ込みます。勿論テクスチャも入れ込み、フェイシャルもある程度のブロックで付けます。カーブは最初から、最後までスプラインで、ステップは使用しません。この段階では各コントローラーのキーはまだ同じフレームにあります。(というか、僕自体がキーのオフセットをあまり多様しないです)ここでは、動作のタイミング、ビート、attitudeに重点を置いてアニメーションを付けて行きます。ここでアプルーブが出たアニメーションはこの後、ほぼ大きく変わる事は有りません。

最後はPolishですが、ここは上で書いたとおり、Blockingでアプルーブが出たものに大して最後の詰めをするステージです。Blockingのアニメーションを変えずに、各フレームごとにアーク、オーバーラップ、などを確認します。後は、カーブを綺麗に整えて、もし本当に必要なら、リードなどに相談して、アニメーションを追加したりします。

と書きましたが、僕が思うのは、比較的一番苦労するのはBlockingのステージだと思います。キャラクターの正しいビートとattitudeをキャラに詰め込まなければ行けないので試行錯誤が一番多いステージだからです。というのも、アニメーションには正解というものがありませんし、色々とやりたい事、試したい事が出てくるからです。それらを試しては、合ううか合わないかをジャッチしての繰り返し。右手を挙げる動作入れるだけで、attitudeは大きく変わってしまう可能性があるので、どのタイミングでどの早さで挙げるのかとか色々試行錯誤です。あと、前後のショットのattitudeを考えつつアニメーションもしなければいけません。ショット単体でいいアニメーションであっても、それが、シーケンスに入ったときに、全く異色のものになっていては使い物にはならないです。勿論一番緻密な作業を強いられるのはPolishですが。

さて、ここで今作業しているプロジェクトの事を交えて書くと、嬉しい事に僕自体のショットの大部分は自分でLayoutから始まっています。(無論他人がLayoutをやって、Blockingから回ってくるアニメーターも沢山居ます)が、しかし我が社はlayoutで既にBlocking の域までプッシュしまくります。つまりはLayoutoなのにBlockigのクオリティを要求されるという事です。コレも一長一短あって、クライアントが気に入らなければ、またやり直しという事態もありますが、いいクオリティを早い時点で見せる事によって、クライアントにより解り易いビジュアルを与えられるし、またクライアントのフィードバックをより的確な物に出来るという利点があります。まあその分、社内のスーパーバイザーがちゃんとディレクターの意図を汲み取ってまとめあげるという能力が必要になってくる、且つスーパーストレスフルな立場になりますが。。。

7/19/2014

Disney PixarとかDreamWorksのアニメーションを作るということ

今回はよく日本に居たときに言われた「pixar disneyとかdreamworksのアニメーションのクオリティ」でとかと言う事について思う所を書いてみたいと思います。特に悪意はなく個人的な考えなので、牙を剥かないでください。まず、僕の意見ですが今の日本で3DCG(アニメーションだけに関してという意味で)において上記の会社のクオリティの作品を作れるかと聞かれると、おそらく”NO”と答えます。この答えに考える反論としては、「時間をかければ出来る」「資金があれば可能」と言う感じのことが出てくると思います。本当にそうでしょうか?

まず根本に戻って、なぜ上記の会社のアニメーションが凄いと感じるのでしょう?お金があるからでしょうか?時間をたっぷり掛けているからでしょうか?強力なパイプライン、マシーンがあるからでしょうか?おそらく、これらの要因はほんの小さな一部でしか無いと考えています。

では何が原因でしょうか?
それはアニメーションに対する基礎知識と演技の分析力にあると思います。
基礎知識とはよく言われる「ディズニーのアニメーションの原則」みたいなものです。そしてそれを理解しているだけでなく、どこでどの様にどのタイミングでどのくらい使うのか?という事を的確に理解している、もしくはディレクションできる人がいます。

その次に、アクティングという物です。
コチラの評価されるアニメーションは動きのうしろに「ストーリがあるか?」という事です。それが一番重要視されます。そしてそこが一番難しい所でもあります。日本的なよく動いてる(僕の見解ではスムーズに動いている)という所ではなく、ストーリー(感情など)が重視されています。演技力という点では日本のCGアニメーションはまだまだだと思います。

さて、つぎは1ショットに掛ける時間を考えてみましょう。150Fのショットに3週間。コレを多いと考えるか少ないと考えるか。おそらく日本のアニメーターの皆さんは「コレだけ時間掛ければアレくらいのクオリティは当たり前」と思うかもしれません。本当にそうでしょうか?僕ならもっと欲しいと思ってしまうかもしれません。彼らは、いかに「ストーリー」を巧く簡潔に、オーディエンスに伝えられるか?いかにユニークな表現を出来るか?という所のバランスに時間を使います。なので、首の角度が45度ティルとしているのがいいのか40度ティルトしているのかということに時間を費やしています。おそらく「たかが5度違うくらいで何も変わらないよ」と思うかもしれません。そしてオーディエンスはその違いを目では感じないかもしれません。しかし彼らはこの違いが何かしらオーディエンスに違いを産むと言う事を知っているのです。5度の違いでキャラのストーリーが変わってしまうと言うのを理解しているのです。だからアニメーターはこだわります。

巧いアクティングというのは、大げさにオーバーアクティングするという事ではなく、ストーリを語れてるかと言う所です。何かに対するレスポンスがキャラクターの感情にマッチしていて、それを的確に表現出来ているかと否かという所です。

上記のことより、「時間、資金さえあればPixarレベルの作品は作れるよ」と言うのは少し安直すぎるかと。まず、ベーシックな部分の蓄積を大切にしていかないと。
なんとなくTwitterの方で呟いたものを考えをまとめて書いてみました。







5/05/2014

続 Animatorの仕事の話 質疑応答編

前回書いたエントリーに対する質問があったので、今回はそれについての返答をまとめたいと思います。


  • Mocapの話が出ていたけど、Mocapデーターを修正する別のチームがあるのか?またMocapデーターの編集はしているのか?
Mocapデーターだけを修正しているチームはありません。編集するならAnimatorがやる事になります。あと、コレはスタジオ、プロジェクトにもよると思いますが、今のスタジオは僕が入社してからのプロジェクトを見る限り、Mocapデーターを使用しておらず、手付けでアニメーションしています。また、前回書いた、デジタルダブルもちまちま手付けでやってました。


  • 以前僕がやっていたIanimateと、実際の現場の差はあったか?

コレについてですが、授業でやっていた物と現場の差はほとんど感じません。勿論作業時間の差などはありますが、求められるクオリティ、考え方、アニメーションに対する態度などは同じでした。なので僕自身はとても役立ったと思います。とくに、海外での経験もなく、日本からこのようなアプローチを学べたのが大きかったです。(しつこいようですが、コレはあくまで個人的な感想です。全ての人がこのように感じるというわけではありません)


  • デイリーについてもう少し詳しく!
デイリーについてもう少し詳しく書きますと、今のプロジェクトは夕方4時くらいまでにサブミットすると、その日のデイリーでなんだかのノート(修正、指示、OKなど)がもらえるようになっています。もちろん、自分の担当のショット全て出してもいいですが、一つだけもしくは出さなくても構いません。そして、デイリーで言われた事や、話した事はプロダクション(制作進行の人たち)が全部メモしていてくれて、Shotgun経由で自分のショットに記述されます。という分けなので、デイリー中は特にメモを取るのに忙しいという事にはならず、スーパーバイザーとの会話等に集中出来るようになっています。この辺りはとても効率よくなっています。


  • 英語は打丈夫なの?
なんと言うか、大丈夫です。特に困った事はありません。例えばもしショットの修正等の話をしていて、言っている単語が解らず、おおよその理解しか出来ない場合があるとします。こういう場合は、「あなたがいってるのは〜だよね?」と自分の知っている単語で確認します。もし自分の解釈があっていれば、『そうだよ』と返事が来るし間違っているばあいは相手が別の単語に置き換えてもう一度説明してくれます。コレの繰り返しです。


  • 演技出来ないショットでもみんななるべくリファレンスとってるの?
これも個人様々で、頑張ってリファレンスしてる同僚もいれば、Youtubeとかで探すアニメーターも居ます。また、サムネイルを書くアニメーターも居ます。この辺りは自分のやり易いようにやったり、各自色々と工夫してやっています。総じて言える事は、何かのリファレンス無しにアニメーション付けているアニメーターは居ないという事です。みんな何かしらの『リファレス』を作っています。

と今回は質問あった物をまとめてみました。また需要があればこういう話題も書いて行こうとも居ます。

4/20/2014

Animatorの仕事の話

今回は、仕事の感じなどを書いてみます。海外志望の人の参考になれば嬉しいです。
僕が今働いているのはFramestoreというVFX会社なので、大半がと言うか、ほぼ全てが実写との合成、映画の仕事となります。仕事の感じなのですが、コレまたプロジェクト、各スタジオ(UKとMontreal)によっても大きく変わってきます。Montrealではアニメーターは全体で25人位でやってます。みんな基本アニメーターは長期の契約で働いています。(Londonの方ではプロジェクトごとの契約があったりします)

以前少しだけ手伝った"Jupiter Ascending"このプロジェクトでAnimatorの主な仕事は

  • クリーチャーアニメーション 
  • 飛行機、ロボットなのどのアニメーション
  • デジタルダブルのアニメーション
  • ドア、主砲などのアニメーション
  • トラッキング的なアニメーション


などがありました。補足すると、デジタルダブルのアニメーションとは、実際に撮影した人物の動きを変えたい時、実際に撮影できないような動き、身体の一部をCGなどに変えたい時などです。また、トラッキング的なアニメーションとは、トラッキングやロトの人たちが出来ない、もっと精密な物が必要な場合、アニメーターに振られたりします。上記にデジタルッダブルの仕事と似たような感じです。実際このプロジェクトで、僕はトラッカーが追従できない、レバーの動きを数日ちまちまトラッキングしてました。
あと、このプロジェクトでは、エフェクトが多いため、アニメーターがエフェクトの見え方、タイミング等のリファレンスも作っていました。

そして今僕が関わっている"Paddington"での主な仕事は


  • Paddingtonのキャラクアーアニメーション
以上!
という風にプロジェクトによって大きく変わります。

しかし、VFX会社なので、どちらもリアルな物が要求されます。動きも実物の物から、理論的に考えて付けて行きます。多少の”嘘”、”誇張”はありますが。
アニメーション用語としては”Push”とか言ったりします。”押す”と言う意味ですがもっと誇張してみて、とかもう少し派手な感じにみたいな感じです。かといって、日本のアニメーションほど、誇張する事はあまり無いです。

以前、日本で「2Dのアニメーターは一枚一枚手で書いてるから、ちゃんと各コマに目がとおってるけど、今のフルCGアニメーションはキーフレームの間はソフトが自動補完してくれるから、コマ単位の確認しないよね」
なんて言われてる方が居ましたが、コチラは大多数が、フレーム単位でスペーシングや、ポーズの確認をしています。この辺りの細かい作業が、クオリティ向上に一役買っているのではないでしょうか。確かに僕の経験上、日本のフルCGアニメーション系は流れで確認する事が多く、フレーム単位で確認することは少なかった様に思います。

基本的に数ショットが振られてその作業を続けて行くというやり方です。デイリーというレビューが基本毎日設定されていて、決まった時間までにサブミット(提出)すると、コーディネーターの人などが、自分の番に呼びにきてくれます。デイリーは主にスーパーバイザー、リード、自分が関わっているショットの前後のアニメーター(ショットシーケンスのひとまとまり、例えばAa120_150というショットが自分に振られていた場合、Aa120というシーケンスにショットを持っている人達と一緒にします)そこで、各ショットの話し合いや、前後のつながりを見て話し合いながら詰めて行きます。デイリーは毎日出す必要はありませんが、今のスーパーバイザーは少しでも進捗が見たい人なので、全ショットバランスよく進めてなるべく多くサブミットするようにしています。デイリーの規則も特に決まっている訳ではなく、プロジェクトのニーズによって色々と変わって行ったりします。
また、大半が実写との合成なので、タイミング、動ける範囲などが既に決まっている(既に撮影された女優、男優との絡みの演技、撮影セットが既に決まっているなど)事が多いため、巧くそれにマッチするようなアニメーションを作るのも楽しくもあり、難しい所だと思います。



3/22/2014

働き始めて感じた違いなどなど

今回は働き始めて気付いた日本との違い(アニメーター視点中心)をまとめたいと思います。前提として、書いている事が全てのスタジオに当てはまるという事ではないです、念のため。

  • フィードバックは主にアクティング中心--この感情ならこういう動きではなくて、こうしてほしいとか。
  • シルエットを大切に--上記を考えつつ、line of actionを考えます。日本で云う、取り合えず、カッコいいポーズというのではなくて、キャラのポーズの流れに意識を置いた感じです
  • Anatomyにそったアニメーションが要求される--身体も、顔も動きのつながりをちゃんとするように言われます。わかり易い例でたとえると、フェイシャルで喋っているけど、動いてるのは口の周りだけとか。これは勿論NGです。
  • リファレンスが大量に用意される-サーバーに関係あるものが用意されます。
  • みんな結構共有大好き-日本では経験無かったのですが、このまばたきの動画凄い!とかメールリングリストで回ってきたりします。
  • 話し合いでアニメーションを作って行く感じ--もちろん、上からのディレクションがくるのですが、こんな動きも付け足したいとか、この時のキャラの感情ならこっちの方が良くない?とかとにかく、いいアニメーションを付けるためにああだこうだ話し合ってます。そしてみんな、その意見に耳を傾けます。
  • 分業制と思われてるけど実は他のセクションとも密接にやり取りしている--完全分業制でアニメーション意外は関わらない分けではなくて、結構いろんなディビジョンとやり取りしています。なんで、アニメーションつけた!ハイおしまい!という訳ではないです。がしかし、そのディビジョン間のやり取りは、コーディネーターが取り持ってくれるので、自分自身でわざわざという感じではないです。
  • どのアニメーションがどれくらい難しいかという事を上がちゃんと解っている--これは僕の経験上ですが、日本だと、いつもアクション>アクティングという難しさ基準みたいなのが暗黙のうちに出来ているような。。勿論そういう場合もありますが、”ジャンプして一回転する”アニメーションより、”一回うなずく”というアクティングのアニメーションの方が難しいときもあるという事。
  • とりあえずみんないろんなバージョンを考えてる--みんな楽しんでます。

とまあ、こんな感じです。上にも書きましたけど、これはスタジオによって違います。というか同じスタジオでも楽しんでるのはアニメーターだけかも。





2/15/2014

Let it go は素晴らしい

年が明けて久しぶりの更新です。
もうすぐ公開の"Frozen"。僕は映画館でべた惚れして、家に帰って速攻Youtubeで"Let it go"を見つけて何回も見ていました。このシーケンスはとても良く出来ていると思います。以前なら”このシーケンスは凄い!!”とわかってても、どこが凄いのかが自分ではっきりとは説明できなかったのですが、今は少しばかり上達したのである程度どこが凄いのかが説明できるようになりました。なので今回はどこが”凄いのか”という所を少しだけ書きたいと思います。

このシーケンスは大まかに4つの部分に分ける事が出来ると思います。そしてそれに対応して彼女の心情がどんどん変化して行きます。そこがこのシーケンスの見せ場だと思います。でそれぞれの心情の変化をどのように表しているかというと、まず手袋を脱ぎ捨て、次にマント、そしてティアラ、最後に服。これらが歌の盛り上がりと巧くマッチして徐々に彼女の解放を盛り上げていっています。この演出はとても良く出来ていて、身から外してゆく物は外側部分の物から、徐々に内面に近い物に。この捨て去る順序もとてもよく練られていると思います。

アニメーション的には手袋を捨て、二回目の氷を出す前に自分のマントを一度後ろにまわしてから氷を出すのですが、このさりげない仕草がいいテクスチャーとなっています。(01:17の辺りから)。その後、マントを取るのですが、そのときのフェイシャルも心情をとてもよく表していて、素晴らしいです。まず口が右唇上がりになっていて(この右唇上がりは最後のショットでも出てきます)最後、視線は長くマントを見続けています。コレは彼女の”さようなら〜”という少しニヒルな感情を巧く表現しています。

ここからの歩きは今までと一転して、軽快で動きも徐々に大きい歩き方に変化します。コレも心情の移り変わりを巧く表していますし、顔も今までとは違って徐々に上向きになっていきます。(上向きは希望などをもったときによく使われる表現です)

"Here I stay~"(02:16)と言う部分で彼女はスカートを軽く持ち上げます。前述したマントと同様、素晴らしいテクスチャーでここでまた繰り返すことで、彼女のキャラクター付けを手伝っています。その後の彼女が両手を上げる部分(02:26)で下唇を噛んでいるのも彼女のキャラクター付けに貢献しています。

(02:54)からは一番好きなシーケンス、ティアラを捨てて髪を解く部分。
彼女はティアラを投げる前に遠くを見つめ、そしてその後一度ティアラに視線を戻し、投げます。この視線の動きだけで彼女の心情がわかるすばらしアニメーションです。髪をとく前も大きいaniticipationと共に瞬きを入れて、気持ちの切り変わりが巧く表現されています。

本当はもっともっと書きたい事があるのですが、とても書ききれないと思うのでコレくらいにしておきます。で、結局、何が言いたいのかというと、このシーケスは凄いと。それだけです。